AIが人間を超える時代に、私たちは何を学び、どのように成長していけばよいのでしょうか?
AIに質問すれば、必要な情報や答えが瞬時に得られるようになりました。
しかし、「答えを得ること」と「人が育つこと」は、必ずしも同じではありません。
私は、AIが進化する今だからこそ、人と人が考えを共有し、互いに学び合うことの価値が、これまで以上に高まっているのではないかと感じています。
今回は、AIとの共存が進む将棋界の動きを取り上げながら、ビジネスにおける人材育成や組織づくりとの共通点について考えてみたいと思います。
AIが人間を超えた将棋界で起きている変化
AIの進化によって、私たちの仕事や学び方は大きく変化しています。
その変化を、ビジネスの世界よりも早く経験してきた分野の一つが「将棋界」です。
かつてはプロ棋士に勝つことが難しかった将棋AIですが、今では人間を上回る強さを持つようになりました。
しかし、AIが強くなったからといって、プロ棋士の存在価値が失われたわけではありません。
むしろ現在では、AIを研究に取り入れながら、新しい戦法や考え方を学び、自らの棋力を高めることが一般的になっています。
つまり、AIを対立する存在としてではなく、成長を支える存在として活用しているのです。
そんな将棋界の変化を象徴するようなイベントが、2026年10月18日に電気通信大学で開催されます。
将棋棋士の伊藤匠さんと、囲碁棋士の一力遼さんによる公開鼎談です。
テーマは、AI時代における人間の学びや創造性について。
- AIから学ぶことと、人間同士で学ぶことには、どのような違いがあるのか。
- AIは人間の能力を奪う存在なのか。それとも、人間の可能性を広げる存在なのか。
囲碁・将棋の世界で先行して起きている変化は、これからのビジネスや組織づくりを考えるうえでも、多くのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
将棋とビジネスに共通する「答えを知ること」と「実行すること」の違い
私が特に興味を持っているのは、AIから学ぶことだけでなく、人間同士の学びにも目が向けられている点です。
これは、企業の人材育成や組織づくりにも共通するテーマだと思います。
例えば、ビジネス上の課題についてAIに質問すれば、さまざまな解決策や選択肢を提示してくれます。
しかし、その答えをどのように受け止め、何を選び、どう行動するかは、結局のところ人間自身に委ねられています。
仮にAIが合理的で優れた選択肢を提示してくれたとしても、それを実行できるかどうかは別の問題です。
- 実行するための能力が備わっているのか。
- 本人やチームのメンバーに、取り組もうとする意欲があるのか。
- そもそも、その選択肢が組織の価値観や現状に合っているのか。
こうしたことは、一人ひとりの経験や価値観、置かれている環境によって変わってきます。
将棋でも、AIが示した最善手を知っていることと、その手の意味を理解し、実際の対局で活かせることは同じではありません。
ビジネスにおいても同様に、正しいと思われる答えを知るだけでは、必ずしも成果や成長につながらないのです。
AI時代の人材育成に必要な「人間同士の学び合い」
では、AIが多くの答えを示してくれる時代に、人間同士で学ぶことには、どのような価値があるのでしょうか。
私は、その一つが「自分一人では気づけなかった視点に出会えること」だと思っています。
例えば、同じ課題について話し合っていても、人によって捉え方は異なります。
ある人は過去の経験から問題点を見つけ、別の人はまったく違う角度から可能性を見出すかもしれません。
自分の考えを言葉にして伝えたり、相手の意見を聞いたりする中で、それまで気づかなかったことに気づく。
そして、考えが整理され、新しい行動につながっていく。
私はこれまで組織開発に携わらせていただく中で、そんな場面を何度も目の当たりにしてきました。
もちろん、AIとの対話によって新たな気づきを得ることもできます。
ただ、人間同士の学び合いには、お互いの経験や価値観を知り、相手の考えに触れながら、一緒に理解を深めていくという特徴があります。
また、誰かの経験談に勇気づけられたり、仲間の言葉によって行動する意欲が生まれたりすることもあります。
これは、単に知識や情報を得るだけでは生まれにくい、人と人との関わりならではの価値ではないでしょうか。
AIによって効率よく答えを得られるようになったからこそ、企業の人材育成においても、知識を教えるだけでなく、対話を通じて考えを深める機会が重要になってくると思います。
将棋を通じてビジネスや組織づくりを考える
将棋の世界には、ビジネスにも通じる興味深いテーマがたくさんあります。
先を読む力、状況に応じて判断する力、限られた選択肢の中から決断する力。
そして今回取り上げた、AIとの向き合い方や人間同士の学び合いも、その一つです。
将棋を指す人と指さない人でも、同じテーマに対する捉え方は異なるかもしれません。
だからこそ、それぞれの経験や視点を持ち寄ることに意味があると感じています。
今後の「将棋部」でも、将棋の技術を学ぶことだけにとどまらず、将棋をきっかけにビジネスや組織づくりについて考えたり、互いの経験を共有したりできる場をつくっていきたいと思います。
AIの進化によって、私たちが学べることは確実に増えています。
その一方で、人と人が関わることでしか得られない気づきや成長もあるはずです。
「答えを得ること」と「人が育つこと」は、必ずしも同じではない。
そんな視点を大切にしながら、これからのAI時代における学びのあり方を考えていきたいと思います。
皆さんは、AIが進化する中で、人と人との学び合いに、どのような価値を感じますか?
同時に、私が興味を持つのは、AIから学ぶことだけでなく、人間同士が学び合うことにも目が向けられている点です。これは、企業の人材育成や組織づくりにも通じる話ではないでしょうか。
AIに質問すれば、模範解答や選択肢が瞬時に得られますが、それをどのように受け止めて、そこから何を選んで、どう行動するのか(活かすのか)は完全に自由です。
また、最適(のよう)に見える選択肢を実行する力があるのか、モチベーションが自分やメンバーに湧くのかは別問題です。
そこには、一人ひとりの経験値や価値観が深く関わってくると思います。
誰かと考えを共有することで、自分一人では気づけなかったことに気づくことがあります。私は組織開発に携わらせていただく中で、そんな場面を目の当たりにしてきました。
「答えを得ること」と「人が育つこと」は、必ずしも同じではないので、AIの進化によって、むしろ人と人が学び合う意味や価値を考える時代になっている気がします。
将棋の世界には、ビジネスや組織づくりにも通じる興味深いテーマがたくさんあります。
「将棋部」でも、将棋を指す方も指さない方も、個々の経験や視点を持ち寄っていただき、新しい発見が生まれるような場づくりに努めていきたいと思います。
皆さんは、AIが進化する中で、人と人との学び合いに、どんな価値を感じますか?

