「私は何でもできます!」
ビジネスの世界で、このようなアピールをする人を見かけることがあります。
しかし、実際のビジネスシーンでは、むしろ逆効果かもしれません。
特に経営者やビジネスリーダーにとって、明確な専門性を持つことは、市場で選ばれるための重要な要素となっているのです。
将棋界に見る専門性の多様性
将棋界を見てみると、専門性の重要さがよく分かります。
確かに、羽生善治会長のように、どんな戦法でも使いこなせる「オールラウンダー」と呼ばれる棋士もいます。
しかし、多くの強豪棋士たちは、それぞれ得意とする分野を持っています。
例えば、
- 攻めの将棋を得意とする棋士
- 受けの将棋に長けた木村九段
- 超早指しが持ち味の糸谷八段
このように、プロの世界でも、「すべてに卓越している」というよりは、「特定の分野で際立った強さを持つ」という形で成功を収めている例が数多く見られます。
「得意」を伸ばす、それが最短路
私(中司)将棋教室で、生徒からよく「どの戦法がいいですか?」という質問を受けます。
しかし、私からの返答は必ず「どの戦法が自分にしっくりきますか?」という問いかけから始まります。
なぜなら、人間には必ず「できること」と「できないこと」があるからです。
例えば私(中司)自身、居飛車党で相穏戦が得意なのですが、急戦はあまり得意ではありません。
無理に急戦を指そうとすると、往々にして自滅してしまうのです。
大切なのは「できないことを何とかする」ことではなく、「できることをより伸ばす」ことです。これこそが、成長への最短経路となるのです。
ビジネスにおける「得意分野」の見つけ方
この考え方は、ビジネスの世界にも直接当てはまります。例えば:
- 話すことが好きな人→営業職
- 細かい作業が得意な人→事務職
- 外を動き回るのが好きな人→フィールドワーク系の職種
人それぞれに、性格や適性が異なります。
話すことが大好きな人が、デスクワークばかりの仕事をしていては、ストレスが溜まってしまうでしょう。
将棋でいえば、自分の「寄付(気質)」に合った戦法を選ぶように、ビジネスでも自分の性格や得意分野に合った領域を選択することが重要です。
専門性を磨くための具体的アプローチ
- 何をしているときが一番楽しいか
- どんな作業が苦にならないか
- 周りからどんな評価をよく受けるか
- その分野の知識やスキルを体系的に学ぶ
- 実践を通じて経験を積む
- 常にアップデートを心がける
- 具体的な実績を積み重ねる
- 自分の専門性を分かりやすく説明できるようにする
- 提供できる価値を明確にする
おわりに:あなたの「得意戦法」は何ですか?
スポーツの世界でも、例えば柔道選手には大外刈りが得意な選手もいれば、内股が得意な選手もいます。
誰もが全ての技を同じように極めることは難しく、それぞれが得意技を持っているのです。
あなたも、無理に「何でもできる人」を目指すのではなく、まずは自分の「得意戦法」を見つけることから始めてみませんか?
それを磨き上げていくことこそが、ビジネスの世界で真に価値ある存在になるための近道なのです。